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Article
2019.05.09

Berezovsky plays Scriabin

Concert review ボリス・ベレゾフスキー 5月4日東京国際フォーラム

ラフォルジュルネ東京2019でベレゾフスキーはオールスクリャービンのプログラムを披露した。5月4日、東京国際フォーラムCホールで行われたその演奏会は正にスクリャービンの宇宙だった。

 

彼が度々行なっている当日プログラム発表のカルトブランシュ・コンサート。今回事前に公表されていた情報は、スクリャービンを中心に、のみ。

 

当日配られたプログラムから変更され演奏されたのは以下だ。
スクリャービン:
2つの詩曲Op32
ピアノソナタ4番 嬰ヘ長調Op30
4つの小品Op51からたよりなさ
2つの小品Op57から舞い踊る愛撫
3つの小品Op49から前奏曲ヘ長調
ピアノソナタ5番Op53
2つの小品Op57からあこがれ
練習曲Op42-3、4、5
3つの練習曲Op65
(アンコール)
ラフマニノフ: 楽興の時Op.16-4、5
スクリャービン: 3つの小品Op45からアルバムの綴り

 

中期から後期へと作曲家の変遷を追う充実の45分。Op32の詩曲が始まると、クラシック用ホールとは言えない会場の雰囲気が一気に甘く気だるい空気へと変わった。中期の代表作である2つの詩曲。ベレゾフスキーらしくサラサラといくぶん速めに弾く。

 

続くソナタ4番は調性がある最後のソナタだ。第1楽章冒頭の和音が抑えられると同時に空間がフニャフニャと蕩けるようだ。気だるい第1楽章は限りなく甘く、シンコペーションで躍動する第2楽章は有り余るテクニックで快速に弾いていく。変奏が複雑に入り組んだ後、燃え立つようにと表示され神々しく第1主題が回帰するコーダは、熱量とスピードを抑制しクールに和音の連打を弾き切る。この曲を聴き終わったら拍手したくなるのは当然だろう。前半にも関わらず、拍手が起こった。

 

当初配布されたプログラムには続けてソナタ5番が予定されていたが、上記に変更され小品が始まった。神秘和音が彩るスクリャービン独自の世界へ入る。ヴェールが掛かったような官能的な音響が漂い、陶酔と神秘の空気に会場が包まれる。まるで香が立ち込めているかのように濃密な空気だ。

 

小曲であっても色とりどりの宇宙の星々を眺めているかのよう。代表作である交響曲4番法悦の詩と連なるソナタ5番、人気の練習曲Op42-5などプログラムに抑揚をつけつつ最後は後期の練習曲3曲。作品番号60番代ともなると神秘は深みを増し、神智学の影響が色濃いスクリャービンの哲学世界となる。ベレゾフスキーは分かりやすくプレゼンテーションしてくれた。

 

アンコールのラフマニノフはロシアロマン溢れる作品。鮮やかに弾きこなすベレゾフスキー。スクリャービンも良かったがこちらの方がよりベレゾフスキーの良さが出る自然な演奏と感じた。

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