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2019.05.20

危うくも美しい強い愛の形「Der Kuss」

クリムトに”接吻”しにウィーントリップ

2019年は日本とオーストリアが外交を始めて150周年、音楽ファン憧れの街・ウィーンが注目されている。東京ではこの春から2つの関連する展覧会が同時開催中だ。

東京都美術館「クリムト展 ウィーンと日本 1900」

国立新美術館「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」

 

1869年(明治2年)、150年前のウィーンは、シュトラウス2世が一世を風靡し、ブルックナーはウィーン国立音楽院の教授になり、ブラームスは高い名声を得始めた頃。日本ではミュージカル「エリザベート」でおなじみのシシィの夫、皇帝フランツ・ヨーゼフ1世がオーストリア=ハンガリー帝国を治めていた。ウィーンは、土地柄、もともと多様な人種の交錯する街だったが、人口の増加や帝国としての対外的な衰弱から、皇帝は街の大改造を行った。ウィーン中心部を取り囲む城壁があった場所には環状道路リングが敷設され、その周囲には様々な都市機能を備えた、今もウィーンを彩る華麗で荘厳な建物が次々と建てられた。ウィーン国立歌劇場もウィーン楽友協会もその時に落成したものだ。

 

皇帝フランツ・ヨーゼフ1世とエリザベート

1873年、整備されたウィーンでは万国博覧会が開催され、日本も本格的に参加する。画家マネ、ゴッホ、モネらに多大な影響を与えたジャポニズムブームはウィーンでも広がりを見せ、クリムトにもその影響があったとされる。カラフルな幾何学模様は着物の柄のようでもある。

 

クリムト遺作 『花嫁』

 

クリムトのもっとも人気の作品「Der Kuss(接吻)」

さて、残念ながら今回来日が叶わなかったこの人気作。東京での2展が始まる少し前、実物を見るためウィーンを訪れた。本国でも絶大なる人気で、街のいたるところに「接吻」がプリントされたグッズが売られていた。国立歌劇場やウィーン・フィルと同様に世界中から観光客を呼び寄せるウィーンが誇る文化遺産なのだ。

ウィーンのなかでも最大のクリムト・コレクションを抱えるのが世界遺産ベルヴェデーレ宮殿にあるオーストリア・ギャラリー。マリア・テレジア時代にハプスブルク家に仕えたプリンツ・オイゲンが夏の離宮にと建てた宮殿は、中心地からトラムで少し南東に下ったところにある。

ベルヴェデーレ宮殿上宮

美しい庭園

豪華な内装も見所

 

訪れた日は日曜日。イースター休暇も重なって小雨降るなかチケット売り場は以下の行列だった。この後、宮殿(上宮)へ入るのも入場制限がかかり、「接吻」が置かれた「1900年頃のウィーン」コーナーへも混雑による人数制限でなかなか入ることが出来なかった。

 

「1900年頃のウィーン」

このコーナーには「世紀末ウィーン」の時代に活躍したクリムトをはじめ、シーレ、ココシュカなど一世紀経てもなお刺激的で魅力的な作品が並ぶ。最大のコレクションだけあって、どの部屋へ行っても多才なクリムトの作品を見ることが出来る。ハイライトはやはり一番奥の部屋、正面で静かに一際輝きを放つ「Der Kuss(接吻)」だった。

 

結婚はしなかったがクリムトが生涯にわたり特別な想いを寄せたエミーリエと自身をモデルにしたとも言われる。黄金の背景から浮かび上がる女性の純粋で満たされた表情が美しい。危うくも特別な愛の姿。見るものを強烈に惹き付ける存在感だ。

 

絵の前には多くの人が立ち尽くし、写真を撮り、じっくりと目に焼き付けていた。芸術が息づく街ウィーン。ここで見ることに価値がある。

 

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